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Noh Jihee 2020年04月23日

無菌環境における切創防止

無菌環境における切創防止

一般に、クリーンルームおよび無菌環境用の衣服は、周囲を取り巻く環境の粒子汚染を最小限に抑えるように完全に設計されています。その結果、鋭利な機器やガラス製品を扱うクリーンルーム担当者は、標準のクリーンルーム手袋では物理的な保護を装備していないため、怪我をするリスクが高まります。クリーンルームで機器を扱うエンジニアおよび作業者は、クリーンルーム対応の衣服も着用する必要がありますが、この衣服により、切創の危険から手を適切に保護出来ない場合があります。 この記事では、クリーンルームおよび管理された環境での切創の危険性と、滅菌済みの耐切創性ライナーで危険を最小限に抑える方法について説明します。

クリーンルームの役割は、粒子レベルを最小限に抑えることです。1

クリーンルームで作業する担当者は、それぞれ、粒子汚染の重大な源となります。2 これらの影響を最小限に抑えるために、専用のクリーンルーム服が開発されています。典型的なクリーンルーム服には、フード、オーバーブーツ、手袋のインナーとアウターを備えた、清潔なカバーオールが含まれます。これらのクリーンルーム服は、通常の操作中に、クリーンルームが汚染されるのを防ぐために使用され、粒子の発生、粒子のろ過、耐摩耗性などの特性について考慮して設計されています。3

しかし、これらの厳しい要件の結果として、クリーンルーム服と手袋は、薄い材料を簡単に破ってしまうガラス製品やその他の鋭利な装置を扱う作業者に対して、一般的に切創保護をしていません。

クリーンルームにおける切創の危険

最良の手順に注意深く従うことで、クリーンルームでの怪我のリスクを最小限に抑えることができます(たとえば、ガラス製試験管に栓を安全に挿入するなど)が、怪我のリスクを完全に排除することは不可能です。2013年に実施された、研究者の職場での態度、実践に関する初めての国際的な調査では、研究室の作業員が日常的に職場における安全性を過大評価していることが明らかになりました。回答者の86%が、自分の研究室は安全に作業できる場所であると答えましたが、約半数が研究室で負傷していました。4最も一般的な負傷は、切創、裂傷、針刺しでした。

たとえば、医薬品製造やバイオテクノロジーの分野では、クリーンルーム作業員は、日常的にプロセス機器の積み下ろし、ガラス製品および鋭利物の洗浄、クリーンルームを準備する必要があります。これらの作業全てにおいて切創の危険があります。危険をもたらすのは、針や鋭利な角がある機器だけではありません。破損しやすい機器、特にガラス製品を扱うことで、負傷する恐れがあります。

医療機器業界では、鋭利な部品を含む機器の組み立ても同様に、クリーンルームの手袋のみを着用して行う場合、安全ではありません。繰り返しになりますが、これらのリスクは常に明白ではありません。メスやキュレットなどのツールや器具は設計上鋭利ですが、細いワイヤーや鋭利なガラスの縁など他の部品は、実験室の作業者に怪我の危険をもたらします。

マイクロエレクトロニクス業界では、製造スタンプの洗浄、ウェーハエッチング化学加工、FAB機器のメンテナンス、洗浄など、怪我をする可能性のある多くの手順がクリーンルーム環境で行われます。この業界のほぼ全ての製造作業において、部品や機器の洗浄、ストリッピング、脱脂に有害な化学物質を使用しています。このような環境では、切創は、酸、アルカリ、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、溶剤など、体全体にリスクをもたらす危険物質による汚染のリスクが高くなります。5

切創保護がないと、クリーンルーム内での機器の洗浄およびメンテナンスを担当するエンジニアにとっても問題となります。クリーンルームで使用される機械は、たいてい、クリーンルーム内に構築されており、取り外すようには設計されていないため、これらの機械の保守は、クリーンルーム対応の衣服を着用した担当者が行う必要があります。クリーンルーム環境は、通常の保護手袋を使用する場所ではなく、標準のクリーンルーム手袋は、機械で作業する時に適切な切創保護性がありません。

したがって、クリーンルーム内で着用する衣服は、必要なレベルの清浄度を満たしながら、切創のリスクのある従業員を適切に保護できることが重要です。

クリーンルーム環境向け耐切創手袋ライナー

クリーンルームでの作業員を切創の危険から保護するため、Ansellは、BioCleanTM S-BCRL手袋ライナーを開発しました。これらは、2枚の標準的なクリーンルーム手袋の間に着用するように設計された、滅菌済み耐切創性ライナーです。6 Dyneema®ダイヤモンド糸で編まれ、中程度の切創リスクのある装置または機器を扱う研究者/オペレーターに対し、制御された環境で無菌プロトコルを維持しながら、EN 338およびANSI A2切創保護を提供します。 

手袋ライナーは、パウダーフリー、ラテックスフリーで、ラテックスアレルギーを予防し、パウダーから生じる汚染の可能性を防ぎます。これは、他の耐切創性ライナーに比べて大きな利点です。他の耐切創性ライナーは、クリーンルーム基準に達していないことが多く、粒子の多い紙で包装されています。BioCleanTM‑ S-BCRL手袋は、使いやすさと清潔さを高めるため、EasyTearポリエチレンウォレットに個包装されています。

スパンデックスと超高分子量ポリエチレンを混合することで、BioCleanTM S-BCRL手袋は、軽量で快適でありながら、厚く、快適でない他のタイプと同じ耐切創性を実現します。

あなたが無菌クリーンルームまたは管理された環境で作業しており、切創や裂傷のリスクに定期的に直面している場合、BioClean耐切創性ライナーをご検討ください。 

 

参考文献

1.      Ohring, M. & Kasprzak, L. Reliability and failure of electronic materials and devices.Reliability and Failure of Electronic Materials and Devices (Elsevier Inc., 2014). doi:10.1142/9789812702876_0011

2.      Hu, S. C. & Shiue, A. Validation and application of the personnel factor for the garment used in cleanrooms.Data Br.6, 750–757 (2016).

3.      Reinmüller, B. & Ljungqvist, B. Modern cleanroom clothing systems:People as a contamination source.PDA J. Pharm.Sci.Technol.57, 114–125 (2003).

4.      Van Noorden, R. Safety survey reveals lab risks.Nature 493, 9–10 (2013).

5.      Safety & health guide for the microelectronics industry - Google Books.Available at: https://books.google.fr/books?id=PpwYRCHgG6EC&pg=PA4&lpg=PA4&dq=cut+hazard+microelectronics&source=bl&ots=l2L7xtiExP&sig=ACfU3U1rhCkU-q2QEzhbg6NNS1T2mrRcag&hl=en&sa=X&ved=2ahUKEwjC-4_R96PoAhUqz4UKHZvPARkQ6AEwAXoECA0QAQ#v=onepage&q=cut hazard microelectronics&f=false.(アクセス年月日:2020年3月18日)

6.      BioClean Cut Resistant Liner S-BCRL.Available at: https://www.ansell.com/gb/en/products/bioclean-cut-resistant-liner-s-bcrl.(アクセス年月日:2020年3月18日)