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Joelyn Yap
Joelyn Yap 2018年01月22日

最高の耐切創の実現

アンセルのマーケティング責任者ポール・ティアニーに聞く、適切な手袋の選び方

「手のけがは、毎年のように緊急治療室への来診や欠勤の理由の上位にあがっています。 最も多くみられる手のけがは、切創と裂傷であることから、現在切創保護は安全管理において重要な問題となっています。

どんな労働環境にも、固有の危険や環境が存在するため、各作業者にとって最適な手袋を見極めることが簡単ではない場合があります。 今回は、作業者が必要な作業を遂行することを可能にしつつ、適切な手袋を選ぶ際に注意すべき点について、アンセルの切創保護製品担当マーケティング責任者ポール・ティアニーと考察していきましょう。


Q1:切創から作業者を守ることには何が含まれますか?

保護手袋、特に耐切創性のある手袋は一般的なアプローチです。 耐切創手袋の設計者かつ製造者として、私たちは耐切創性の糸、ニット地の引裂強度、耐摩耗性などの要素を考慮しています。 加えて、切創保護の重要な側面としてグリップ力や指先の操作性など他の特性にも目を向けています。

手袋を別にして、切創保護には、機械の安全装置、労働環境の配置、労働環境、作業者のトレーニングなど防護衣とは関係のない他の要因も含まれます。 これらの要因と同じくらい私たちにとって重要な手袋は、多くの場合最後の防衛手段とみなされます。 安全責任者は、何よりもまず作業者の手がリスクにさらされていないことを保証できるよう、できることをすべて行う必要があります。

Q2:必要な切創保護の水準を選択する際、何を考慮すべきでしょうか? 利用できる最高水準の手袋を選択するのと同じくらい簡単に選択できるものでしょうか?

症状に対応するだけでは不十分です。 切創を例に考えてみてください。手袋の耐切断性の水準を引き上げることはそう簡単ではありません。根本的な原因を特定する必要があるためです。

切創の原因は鋭利な物によるものか、グリップ力の低下によるものか、作業者の疲労によるものかを特定する必要があります。 これ以外にも、切創を生じさせる可能性のある要因はたくさんあります。 危険を完全に評価し、適切な手袋を選択することが重要となります。 けがは大抵、選択ミスや装着者のニーズについて理解が不足していることが原因で生じます。

Q3:2018 年に安全規格である EN 388 に大幅な変更が加えられました。新たな規格の内容と、保護手袋を選択する方々への影響を説明してください。

1994 年に最初の規格が発表されて以降、また前の規格が発表された 2003 年以降も、技術は進化を遂げています。 新しい加工糸(ガラス繊維、ステンレススチールなど) により、切創試験規格に一貫性と信頼性がなくなり、ラボによって、そして同じラボ内でさえ、大きくばらつきがあることが認められました。 それもあり、新しい試験方法が至急必要でした。
耐摩耗性試験においては、旧規格で指定されていた紙やすりの使用が廃止されたため、様々な紙やすりが使用され、一貫性のない試験結果につながっていました。 規格に加えられた最新の改正では、新たな紙やすりが指定され、ラボで一貫性と信頼性のある試験の実施が可能となりました。

近年、保護機能として耐衝撃バンパーを用いた手袋の製造が見られ始めています。 この種のバンパーの有効性を試験する一貫性のある方法がなかったため、手袋メーカーは検証可能な試験を実施することなく、この機能を謳い始めました。 この機能をより明確化するため、耐衝撃試験が開発されました。 そしてこの合否試験に合格しなければ、この機能を表示することはできなくなりました。

最後になりますが、おそらく産業界に一番大きな影響をもたらしたのは、新しい EN ISO の耐切創試験が導入されたことです。 この試験は、クープテストで使用された丸刃が鈍化していたと判断された耐切創素材について実施されます。 手袋メーカーは、現在耐切断性を評価するため 2 種類の試験を使用しています。 安全責任者は、各種試験にどのような役割があるのか、そして手袋を装着する人にとって各種試験がどのような意味を持つのかを理解する必要があります。


Q4:レザーは防護衣に最適な素材だとよく言われますが、 ご自身の経験から、市販されている素材の中で、過酷な耐切断の問題を解決する素材は何だと思いますか?

レザーは、耐切創性素材としては理想的ではありません。 レザーは天然素材ですので、素材に一貫性がありません。 自信を持って切創保護製品にレザーを使用することは、メーカーにとって難しい課題です。 結局、レザーは単に皮でしかなく、人間の皮膚を動物の皮で作られた製品で保護するということ自体、意味がありません。

現在では、高水準の保護を提供する糸はたくさんあります。 最も効果的な糸のいくつかは、混紡糸や加工糸です。 例えばパラアラミドは、スチールの 5 倍の強度があります。また、高性能ポリエチレンは、パラアラミドの 3 倍の強度があります。 しかもとても快適で、優れた指先操作性を実現します。 これらの糸を使用した手袋の設計、試験、製造の幅ははるかに広がっており、長年使用しても信頼できる高水準の切創保護を実現できます。


 

Q5:他にも、耐切創性を評価し、手袋を選択する際に重要なことは何でしょうか?

グリップ力です。鋭利な物は動いている時に危険がはるかに増すという事実を考慮すれば、グリップ力の重要性は明らかです。 安定したグリップ性能に、適切な水準の耐切断性を組み合わせれば、切創のリスクを大幅に軽減できます。 作業中、滑りを防止し、作業を行う際に必要なグリップ力を減らすことで、手袋装着者に制御力を提供できます。

Q6:作業者は、保護力、機敏性、装着感を提供する手袋が望ましいと言いますが、そのような製品は存在するのでしょうか?もしくは、手袋はこれらのうち 1 つや 2 つのメリットのみを考慮して設計されているのでしょうか?

かつてこれは実現が難しい課題でした。多くの場合、保護力を最大限に引き上げるためには、巧緻性を犠牲にしなければなりませんでした。 ところが、近年の最先端の糸や安全性能を試験する新たな方法を使用することで、作業者が好む手袋を設計するという私たちの目標に近付くことができています。

INTERCEPT™ テクノロジー採用の HyFlex® 製品は良い例でしょう。 INTERCEPT™ は、加工繊維、合成繊維、天然繊維を混紡した糸で、高水準の耐切断性を生み出します。 この繊維は、パラアラミドや高性能ポリエチレンなどの加工糸を混紡した糸です。 これらの糸とライクラやコットンなど肌触りの良い糸を組み合わせ、優れた製品を作ることができます。

Q7:INTERCEPT™ テクノロジーはどのように機能するのでしょうか?また、企業、安全責任者、作業者の安全にとってのメリットを教えていただけますか?

A:INTERCEPT™ テクノロジーは、特に切創のリスクのある一般的な用途向けに、より総合的な耐切創ソリューションを求める産業全体からの要望を受けて誕生したものです。 アンセルは、これらの産業に関する深い知識を利用して、このテクノロジー採用製品の製造に関して、原料の調達から、編み方、手袋の浸漬コーティング作業まで、自社の製造工場で最初から最後まで全工程を 100% 管理できる製造工程を確立しました。

この工程により、アンセルは INTERCEPT™ テクノロジーのメリットである一貫性のある耐切創性を実現することに成功しました。 これにより、安全責任者は、作業者が常に保護されていることに確信を持ち、安心感を得ることができます。

Q8:柔軟なグリップ性能は、最新の HyFlex® シリーズの主なメリットのひとつですが、 これ以外に、作業者がこの手袋を選択する理由を説明していただけますか?

A:当社最新の HyFlex® シリーズは、これまで考察した多くの問題を解決します。 この手袋は、親指の付け根部分が強化されているため、長時間使用時に、優れた耐久性と装着感が得られ、撥油性にも優れています。また、最も軽量な耐切創性手袋のひとつでもあります。

Q9:他に付け加えることはありますか?

A:「耐切断性」と「切断防止機能」を提供する製品は、切創や刺し傷を完全に防止したり排除したり耐するのではなく、電動の刃やその他の鋭利物、回転装置から保護することを意図したものでも、試験されたものでもありません。 鋭利物を取り扱う際には必ず注意し、慎重に作業を行うことが推奨されています。

貴重な時間を割いて深い知識を共有してくれたポールに、心から感謝します!」