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Ansell Ltd. 2024年03月19日

豪アンセルのアウグスト・アコルシ最高商務責任者に聞く 化学品防護具の日本展開強化

産業や医療向けに個人防護具を展開する豪アンセル(メルボルン)は日本市場の開拓を強化する。日本では4月に労働安全衛生法が改正され、リスク評価対象の化学物質が大幅に増える。労働者の曝露濃度を基準値以下にすることが義務づけられ、防護具の需要が高まる。アジア太平洋地域などを担当するアウグスト・アコルシ最高商務責任者に戦略を聞いた。

アンセルの事業概要を教えてください。

「ヘルスケアや産業向けの耐薬品手袋、身体保護具といった個人防護具を総合的に手がける世界大手として広く認知されている。世界100カ国以上、35以上の産業分野に事業展開しており、世界の規制動向や地域特性を踏まえて新たな付加価値を提供できる強みがある。当社の使命は職場リスクの2歩先を見据えて労働者に安全を提供すること。サプライチェーン全体に多大な投資を行って持続可能な調達と製造を推進し、製品のカーボンフットプリントも可視化している」

日本では4月に労働安全衛生法が改正されます。

「リスク評価が義務づけられる化学物質の数は改正前の674から約2900に大幅に増え、さらに数万の物質が新たに分類される可能性もある。日本における化学物質評価のあり方は大きく変わる。企業は化学物質による労働災害を防止する義務が広がり、化学物質の取り扱いや製造では適切な防護具を着用し、労働者の化学物質への曝露を制限する法的責任を負う」

「化学品は1日に約1万5000品が開発されているといわれ、新規の化学物質や混合化合物に対して最適な防護具を選ぶには、どのような素材やデザインが適切かを明らかにして選択することが極めて重要になる。当社にはこうした新しい要件に対応できる専門知識とリソースがある」

具体的にどのようなサービスを展開しますか。

 「当社が展開するデータベース『ガーディアンケミカルサービス』は、化学物質や用途に応じた最適な防護具を科学的な観点から提案するデジタルツールだ。5万種類以上の化学物質の透過性データを蓄積しており、使用する化学物質に対する保護手袋や保護衣の耐性を評価できる。予想される破過時間や分解評価などの個別評価も請け負える。世界でさまざまな事例に対応してきた実績も強みとして生かせる」

日本の顧客をどう開拓しますか。

「顧客や販売代理店とより緊密に協力できる営業組織に昨年改編した。日本およびグローバルの営業部門が一体となって日本の企業をあらゆる側面でサポートできる。日本経済は年率1%前後の緩やかな成長が続くと予測されるなか、個人防護具の市場規模は、医療分野の需要や安全意識の高まりを受けて年率6%の拡大を見込め、2030年には35億ドル(約5000億円)に達する見通しだ」
「日本の需要を取り込むべく、新製品を開発するために新しいポリマーや添加剤、繊維の導入にも積極的に取り組む。日本を戦略的市場と位置付け、日本政府とも連携を強化し、最適なソリューションの提供を目指す」


(聞き手=三枝寿一)
(出典: 化学工業日報。掲載期間は1年間 )


以上